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《基本情報》
原題:L’Homme du train
出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ、ジャン=フランソワ・ステブナン、チャーリー・ネルソン
監督:パトリス・ルコント
製作国:フランス・ドイツ・イギリス・スイス合作 製作年:2002年 90分

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冴えない田舎の寒村で電車を降りた男、ミランは、薬局でたまたま出会った老紳士マネスキエの自宅についていく。そこは立派だが朽ちかけた古い屋敷、マネスキエは一人で住んでいる。彼の止まらないおしゃべりにうんざりしたミランは、薬だけ飲むとすぐに出て行くが、すぐに村には宿がないことに気づき、屋敷に居候することに。
だが、実はミランはこの村の銀行を狙っている強盗だったのだ。その正体に気づくと、マネスキエは警戒するどころかウキウキしはじめ──

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人生の終わりが近づきかけている2人の男の、奇妙な共同生活と、友情を描いたミニシアター系作品。
フランス映画を見ていると、いつも独特だなぁ😅 と思うのですが──人との出会いから親密になるまでのスピーディーさ(男女ならベッドインが早いし、なんかカジュアル)、犯罪ものでも倫理観より感情重視?(主人公が殺人しても普通に「やりたかったからやっちゃいました」って感じで捕まらずに終わる)など──価値観が日本人やアメリカ映画のソレとは全然違うんだなあ💧という感覚を、初っ端から感じさせられました。
怪しいよそ者をいきなり屋敷に入れてしまうマネスキエは、とりわけ人恋しい変人なんでしょうが、おいおい(^◇^;)それでいいのぉ~?と(笑)でも、その自由な感性、いいですね👍
始終淡々とした雰囲気ながら、二人のチグハグなやりとりや、それまでの生き方がにじみ出たセリフの一つ一つに、ちょっと皮肉なユーモアが効いていて不思議とおもしろいです。二人の男が出会っただけだんですが、この後どうなるんだろう、と気になってしまいます。
最後の一葉が落ちようとしている木枯らしのなか、思いがけず温かな暖炉の前に招かれたような、人生の一コマを切り取った小作品。
選ばなかった人生への憧れ

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人生は何にもやらずにいるには長すぎるし、すべてをやり尽くそうとするには短すぎる。
レストランのメニューが全部おいしそうだからといって、胃袋にもお金にも限界がるように(笑)
何かをやろうするとき、いくつもの選択肢の中から、何かを選ぶということは、それ以外の選択肢を捨てるということです。
「自分の人生これでよかったんだろうか…」と、悩んだ時でなくても、ふいに、今まで捨ててきた選択肢を選んでいたら、どうなっていたんだろう?と思うときってありますよね。
それから、この先のことも、、
若いうちはまだいくらでも選び直せると思う──今はまだタイミングじゃないけれど、いつかきっとこれをやる!──そんな風に胸を膨らませてくれる楽しい夢想は、
歳をとるごとに──あんなことも、こんなこともしたかったけど、できなかった…という苦い心残りへと変わっていきます。
これは、そんな境で出会った2人の男の物語。
一人は家も家族もない流れ者の中年、男臭くて無骨な銀行強盗・ミラン。
もう一人は、生まれ育った田舎で教師をしながら、先祖から受け継いだ朽ちかけた屋敷で地味に暮らしてきた、独り身の老人・マネスキエ。
そんな正反対な生き方をしてきた二人は、実はおたがいの中に、「自分が秘かに憧れていたけれど歩めなかった人生」があったことを発見します。

革ジャンを勝手に借りて、銃を持ったギャングのフリ…(^^) 出典: YouTube
ミランはマネスキエから、「ずっと真面目に生きてきたが、銀行強盗をするのが夢だった!」と無茶なことを頼まれ、さすがにそれはできないので、廃屋で銃を撃たせてやるのですが、子供のようにはしゃぐ老紳士を見守る姿が、なんとも微笑ましかったです。
マネスキエ自身は、退屈極まりない人生! とうんざりしていますが、昔の教え子と会話している様子を、遠巻きに見ているミランの眼差しも優しげでした。
はじめは、強面な外見どおり、表情も言動も無愛想で寒々しい感じだったミランから、だんだんと温かみが芽生えるにつれ、二人の共同生活をのぞいているこちらも、ほっこりした気分になってきます。
またマネスキエのほうも、憧れの西部劇の男のようなミランと過ごしていることに、ウキウキしっぱなしなのが、おかしくて可愛い。
”やりたいことに年齢は関係ない、いつでもやり直せる”というポジティブな考え方に、私は賛成ですし、そういうメッセージの作品は多いです。が、この映画のラストはそういうものではありません。そして、伝えたいテーマも、そういうことではないのだと思います。

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──辛いこともあったけれど、そんなに悪いことばかりじゃなかったさ。こういう風に生きるのが俺なんだから。
ただ、自分の選ばなかった人生、歩めなかった人生。
それは経験しなったことだからこそ、永遠の謎であり、未知の冒険だからこそ、輝いて見える。
その輝きを、教えてくれてありがとう。…2人の間に流れているのは、そんな想いではないでしょうか。
実際にその人生を歩んだら、それなりの苦悩や退屈さもあるだろう──自分なりのポリシーも経験もある大人だから、そう薄々気づいていたとしても、、
一度の人生で経験し尽くすには、世界はあまりにも広く、心揺さぶる景色とドラマにあふれているから、
私たちは時々、淡い憧れをふわふわと膨らませて、あったかもしれない可能性を夢を見るのです。